マイコン回路での入力信号増幅をオペアンプで行う方法

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ここの記述は、オペアンプを使ってセンサー等からの信号を増幅する場合の記事です。

 マイコン(Arduino,PIC)のアナログ入力は0V〜5Vの範囲で入力出来ますが、
センサーの出力は数10mV〜数100mVとか1V〜2Vの範囲だったりします、これをこのままアナログ入力に 接続して読み取っても良いのですが精度が良くありません、せっかく0V〜5Vの範囲で読み込めるのですから センサーの出力をこの範囲まで広げて(増幅して)読み取ってやれば精度が高くなります。
これをオペアンプを使って行えば、少ない部品で比較的簡単に増幅が出来ます。

マイコン回路でのオペアンプについて

 オペアンプの増幅には反転増幅回路と非反転増幅回路が有り、 入力信号の±の極性が反転して出力されるのが反転増幅回路ですが、マイコンで利用するなら入力信号をそのまま増幅して 反転せずにそのままの形で出力される非反転増幅回路が良いでしょう、ここでの記事は非反転増幅回路のみの記述となります。
尚、オペアンプを使ったコンパレータについての話はこちらを参考にして下さい。

マイコン回路で使用するオペアンプの選定ポイント

電源電圧(VCC:Supply Voltage)
 オペアンプには両電源(例:-5V〜+5V)のタイプと単電源(例:0V-5V)のタイプが有ります、
 両方OKなオペアンプも有ります、マイコン回路での使用なら単電源を選びましょう。
 VCC=±16とか書いて有る物は両電源で、3V〜32Vとか書いて有る物は単電源です。
 両方OKな物は3V〜32V (or ±1.5V〜16V)とかVCc=±16 or 32とか書いて有ったりします。

出力電流(VI/ISOURCE:Output Current)
 オペアンプがどれだけ電流を出力できるかを示します、これ以上の電流を流そうとすると十分な振幅
 で信号を取り出せなくなったり、壊れたりします、注意が必要でしょう。(下記シュミレーション参照)
 また、1mAも流せないものが有ったりします、要注意です。
 尚、データシートに記載されていない場合が有ります、その時はグラフから読み取りましょう。

出力電圧(VOH/VOL:Output Voltage Swing)
 電源電圧以上は出力できないです、例えば5Vを繋いだら5V以上は出力(増幅)出来ないと言う事です
 が、実際は5Vより少ないです。(下記シュミレーション参照)
 例えばLM358Aのデータシートによれば30V繋いだら28V(VOH)までの出力しか出来ません、
 また、下方向 0V(VOL)側は0Vにはならず5mV〜20mVは必ず出力されると言う事です。
 なので、出来るだけ0V〜電源電圧の範囲に等しくなるオペアンプを使いましょう、ほぼ、電源電圧
 に近い出力が出せるオペアンプは「レール・トゥ・レールアウトプット」「フルスウィング」と言います。

入力オフセット電圧(VIO:Input Offset Voltage)
 この入力オフセット電圧分が出力電圧に加算されます、なので誤差が生じます。
 だから、入力が0Vでもこの入力オフセット電圧の分だけ出力されるので0Vでないと言う事です。
 例えばLM358Aのデータシートによれば入力オフセット電圧は2.9mVです、1V入力して3倍増幅したと
 すると3V(3000mV)ですが実際は3003mV位出力されます。(下記シュミレーション参照)
 よって、出来るだけ入力オフセット電圧の低いオペアンプを選びましょう。

私の御用達しのお店「秋月」で選ぶなら、お気軽実験用低価格であればLM358N(5個100円)、
レール・トゥ・レールなら、LMC6482AIN(150円)かNJM2732D(100円)辺りでしょうか、
レール・トゥ・レールでないけど高精度(超低オフセット電圧)を求めるならNJM2119D(250円)。
また、ここの記事ではLM358Nを使っています、LM358Nのデータシートはこちらを参照下さい。

回路記号図とピン配置図

回路記号図
 左図が回路記号図です、図の左側は電源の回路を
 省いた形でこちらの方が一般的かなぁ。

ピン配置図
このピン配置図はDIPの8Pタイプで回路が2回路入っています。
1回路しか使わない場合は、残りの回路のOUTとIN- ピン同し、
GNDとIN+ ピン同しをジャンパー配線した方が良いです、
入力端子をそのままにしておくとノイズ等により動作して使用している回路に悪影響を与える可能性が有るそうです。
(下記実験回路図の黄色ジャンパー線を参照)
また、電源端子8番と4番の間に
バイパスコンデンサとして0.1uFを接続しましょう。

《非反転増幅回路》

回路図1 左図が非反転増幅回路でINからの電圧が2倍に増幅されてOUTから出てきます。
例えば1V入力したら2V(2000mV)ですが実際は2003mV程出力するでしょう、 出来るだけ正確に2Vにしたければ入力オフセット電圧の低いオペアンプを選びましょう。
また、2V入力したら4VですがLM358Nは5V電源で3.5V位(実測値3.74V)までしか出力しないので、 4Vでなく3.5V位までの増幅です、5V近くまで増幅したければレール・トゥ・レールタイプのオペアンプを使って下さい。

増幅度は抵抗のR1とR2で決まります、増幅度=(R2/R1) + 1 です、
なのでR2=20KΩに変更したら3倍増幅ですね。また、抵抗値は1K〜100KΩ辺りで選択して下さい。

この回路を使った記事は「温度センサー(LM61CIZ)の使い方」を参考にして下さい。

シュミレーション

LTspiceIVシュミレータを使ってシュミレーションの様な事をやって見ます。
回路は非反転増幅でオペアンプのモデルはLM358Nを使用し電源電圧0-5Vで2倍増幅です。

尚、LTspiceIVシュミレータのインストール等は「ねがてぃぶろぐ」さんのブログを参照下さい。
ただ、ダウンロード先のHP画面が少し変わっている様です、 ダウンロード先画面の[SPICE]項目の
”LTspice@”文字をクリックして項目画面を展開させ、”詳細ページ”をクリックしましょう。
LTspice詳細ページが開いたらMyPCのOS用をダウンロード出来ます。

シュミレーション1

上の図は、100mV(緑ライン)を入力して見ました、出力は200mVでなく203.5mV(青ライン)程でています。

こちらの記事で使った温度センサーLM61CIZは300mV〜1600mVを出力します。
なので、今度は300mV〜1600mVの信号を入力して見ます。

シュミレーション2

入力300mV〜1600mV(緑ライン)に対して出力(青ライン)が2倍出ています。

今度はR2抵抗を20KΩにして入力300mV〜1600mV信号を3倍で見てみましょう。

シュミレーション3

このシミュレーションの結果では入力約1.3V辺りから出力が3.98V(実測値3.74V)以上飽和していて出ていないです よね、これが上の方で記載した電源電圧まで出力しないと言う事です。
レール・トゥ・レールタイプのオペアンプを使うと出力すると思います。


こ〜んな事もやって見ました、「入力信号(電圧)が繋がっていないとぉどうなるのぉ?」です。
下記図の回路の様に入力信号を取ってシュミレータを動かして見ました。
シュミレーション4
入力が2V(緑ライン)で出力が4V(青ライン)程出ていますね。

これは入力の電位が定まらないのが原因で、 外来ノイズや漏れ電流や周りの磁界によって発生した電圧等 の影響を受けている為らしいです。

それなりのグラフを表示するんですねシュミレータ 偉いぞぉ。

次に下図の回路の様にオペアンプの+入力から 抵抗R3でGNDに接続してみました。


シュミレーション5
入力オフセット電圧が有るので0Vにはなっていないですね。
で、出力も0Vでなく少し出ています。
あれ、オフセット2mVなら出力は2倍で4mVじゃぁね?
LM358Nはこの様な微弱な信号処理は向いていないって事ですかね。
50mV辺りからならちゃんと2倍になりますが、 100mV以下の増幅を行いたいならそれなりのオペアンプを使いなさいって事ですよね。

この結果からもわかる様にもし入力が上図の様にオープンになる可能性が有るなら、この様に 抵抗R3でGNDに配線して下さい。



次は電流を見てみましょう、下図の回路の様に、電流を流すためにオペアンプの出力に100Ωの抵抗を接続します。

シュミレーション6

赤ラインが入力電圧、緑ラインが入力電流で水色ラインが出力電圧、青ラインが出力電流です。
入力電流(緑ライン)がほとんど流れていない事が分かると思います、
LM358Nのデータシートによれば出力電流は30mAまでOKの様です、図の出力電流(青ライン)で31.78mAまでは正常に動いていますね。
では次にもっと電流を流す為に出力の抵抗を10Ωにして見ます。

シュミレーション7

どうでしょう、入力電圧(赤ライン)は正常なのですが、出力電圧(水色ライン)が正常に増幅されていませんよね。
これは出力電流(青ライン)を見てもわかる様に37.38mAで飽和状態になっている為です、
(実測値では31mA程で飽和していました)。
って事はオペアンプが出力可能な電流範囲内で使用しなさいって事ですよね。

実験回路

実験回路

これが非反転増幅の実験ボードです、上での回路図はLM358Nの1回路目で記述されていますが、
この実験では2回路目を使っています、ブレッドボードで回路を描くのにこの方がスッキリする為で〜す。
また、黄色の線が上の方でも記載した様に使用しない回路での空きピン処理です。

R1/R2/R3の抵抗は10KΩを取り付けて下さい、2倍増幅です。

電圧の測り方
1)テスターの切り替えスイッチはVの電圧にします。(5V以上は流れません)
2)GNDのE点にテスターの−(COM)端子(黒のテストリード)を接続します。
3)テスターの+端子(赤のテストリード)をD点に接続してます。
4)半固定抵抗を回してみます、約1V辺りに調整します。(デジタルテスターがやり易いでしょう)
5)D点からC点にテストリードを接続し、値を読み取ります。
  (2倍程に増幅されていなければ配線等見直しましょう)
6)R2抵抗を20KΩに取り換え3倍増幅でもやってみましょう。

電流の測り方
1)上図の実験ボードからA点ーB点間の青ジャンパー線を取り外します。
2)テスターの切り替えスイッチはmAの電流にします。(50mA以上は流れません)
3)テスターの−(COM)端子(黒のテストリード)をA点に接続してます。
4)テスターの+端子(赤のテストリード)をB(C)点に接続してます。
5)値を読み取ります。
6)今より値の小さい抵抗とR3抵抗を取り換えて見て再測定します。
  (だいたい100Ω辺りから31mA程で飽和すると思います。)
  (但し、飽和させてオペアンプが壊れても責任持てません!)

課題
他のサイトを参考に反転増幅回路でも行ってみましょう。


最後に、このLTspiceIVシュミレータは日本で良く使う部品のモデルが無いってのがちょっとぉあれだな、
部品メーカは自分ところの部品モデルを無償で早急に出しなさい、お願い!。
じゃ〜ないと部品使わないぞぉ!(○`ε´○)プンプン!!




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